学校教育

教科

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教科

理科

〜これまでの研究の経緯〜

 本校では昭和41年から今日まで「主体性の高まりをめざす課題学習」を研究主題として掲げ、その解明に取り組んできた。その間、理科部会は、学習司会者による学び方、探究ノートによる学び方、日常生活とのかかわりで学ぶ学び方、課題発表による学び方、課題研究による学び方などを工夫し、主体的な人間の育成を目指し、実践や研究を行ってきた。それらの研究の成果は、「学び方を学ぶ理科の課題学習」(昭和54年明治図書)、「学び方を学ぶ課題学習」(平成4年明治図書)、「主体性の高まりをめざして」(平成21年富山大学出版会)にまとめられている。
 近年では、研究主題「主体性の高まりをめざす課題学習」のもと、平成23年から26年までは「理科の課題学習における言語活動の明確化と充実」を副題に掲げ研究に取り組んだ。平成27年から「教科の本質に迫る授業づくり」、令和2年からは、「見方・考え方」を働かせ、『深い学び』を実現する授業づくり」を副題とし、本校が長年研究を進めてきた理科の課題学習を見つめ直し、研究・実践に取り組んだ。その結果、これまでの課題学習の過程では、解決に向けて突き進んだ議論は、生徒が同じ「見方・考え方」を働かせた結果によるものであったり、「教師の経験」として片付けていたことが「見方・考え方」を的確に働かせていることによるものであったりと、これまでの研究の成果の裏付けができた印象を受けた。今後も継続して「見方・考え方」を働かせ、「深い学び」が実現できる授業づくりに励んでいきたいと考えている。
 その時々の教育をめぐる今日的課題を副題として取り上げ、本校の提案する課題学習を軸に研究に取り組んでいる。そして、令和7年からは、「学びの往来を通して『自立した学習者』を育成する」をテーマに研究・実践に取り組んでいる。

 

令和7年度の実践

教育研究協議会

【単元・題材名】

 化学変化とイオン

【授業のねらい】
 「ダニエル電池はどのようにして電流を流しているのだろうか」を学習課題に設定して学習を進めた。その際、探究の順番や実験方法等を教師が主導するのではなく、生徒に委ねた。その過程で電極で生成される物質や電流の流れる向きから電子の授受を理解するとともに、水溶液中で起こる素焼き容器を介したイオンの動きと、静電気で学習した電気の偏りを関連付けて理解し、ダニエル電池の仕組みを説明することができるようになると考えた。

【本時の実践で明らかになったこと】
 水溶液中でのイオンの動きを考える際に、箔検電器や水の電気分解を粒子のモデルで学習したことが生徒の活動の手立てとなっていた。また、電気的な偏りについて触れる生徒もおり、エネルギーを柱とする領域の学習内容を関連付けて学びを深めていた。学習活動を生徒に委ねた場合、生徒は興味・関心のまま仮説を設定したり実験したりすることが多い。生徒に、仮説や実験は、課題の解決に迫ることができるのかを適宜問い、課題に返る学習の流れを教師自身が意識することが大切であることが分かった。

(授業者 本江 信一郎)

 

令和6年度の実践

公開授業

【単元・題材名】

 天気とその変化

【授業のねらい】
 単元の終末に、自分たちが修学旅行で行く沖縄・那覇の気象を予想させる。教科書等で扱う分かりやすい気象ではないため、その変化を捉えることは困難であるが、修学旅行で行く土地の気象を予想させることで、生徒の主体性を喚起し、既習事項を生かして気象の変化を大きなスケールで捉えることができる。

【成果と課題】
 気象要素同士の関係は既習内容であったが、「予想するには、どの気象要素が必要か」と問うと、「気圧が分かれば、天気、風向、風速等が分かる」と生徒が発言するなど、学びが深まっている様子がみられた。また、予想させたことで、生徒は3日前からの観測記録を参考に、那覇より西の地域に着目するなど、時間的・空間的な見方をはたらかせることができた。

(授業者 本江 信一郎)

 

教育研究協議会

【単元・題材名】

 状態変化と粒子モデル

【授業のねらい】
 エタノールの液体が気体に状態変化するときに体積が大きくなる様子を観察し、体積変化と粒子の様子の関係性を考えさせる。生徒自身が考えた粒子モデルを基に、液体が固体に状態変化するときの粒子の様子を実体的に考えさせる。この学習を通して、状態変化における粒子の運動の様子と熱を関係付けて理解させるとともに、目に見えない事物・現象を実体的に捉え、議論できる力を育む。

【成果と課題】
 目に見えない粒子の様子を考えるために、自分の考えの根拠を明確し、様々な考えの共通点や相違点を比較しながら議論し、状態変化と粒子の関係について話し合うことができた。また、液体が気体に状態変化するときの粒子モデルを基に、液体が固体に状態変化する様子を演繹的に考え、実験で確かめることで、状態変化によって粒子の運動の様子が変化することを説明することができた。

(授業者 五十嵐 大輔)

 

令和5年度の実践

公開授業

【単元・題材名】

 霧や雲の発生

【授業のねらい】
 状態変化の様子や水溶液、再結晶の様子を捉えてきた既習内容と関連付けて、雲ができる様子を説明することができる。

【成果と課題】
 既習内容を基に立てた仮説について、空気中の水蒸気を凝結させる実験や実際の雲のでき方と関係付けながら、粒子モデルを使って考察を深めていくことは、生徒の理解を深め、論理的に説明させるための有効な手立てであった。一方で、空間的・時間的な変化の様子を生徒に捉えさせるための小課題のあり方や教師の問いかけ方には工夫が必要であることが分かった。

(授業者 玉生 貴大)

 

教育研究協議会

【単元・題材名】

 状態変化と粒子モデル

【授業のねらい】
 炭酸水の中の干しブドウは、何が変化したことで浮力の大きさが変化し、浮き沈みしたのかを考えさせる。何をどのようにして確かめるのかを話し合ったり実験したりすることを通して、水圧、浮力について理解するとともに、物体にはたらく様々な力の変化や関係を捉えられるようにして学びを深める。

【成果と課題】
 「浮く」「沈む」という生活経験に改めて目を向けさせ、課題意識をもたせることで生徒は意欲的に取り組み、主体的に解決に向かおうとする姿が見られた。「なぜ浮き沈みするのか」と課題を設定したことで、浮力の大きさに関する内容だけではなく、物体にはたらく様々な力を関連付けて生徒は説明することができた。

(授業者 本江 信一郎)